知らなきゃソンする野菜話です。美容と健康にぜひ!


by sonyasa

知らなきゃソンする野菜話 カリフォルニアの果物

カリフォルニアの果物

アメリカの農産物と言えば、一昔前は「まずい」と定評だった。広大な畑に機械を入れ、乱暴な取り扱いや長距離輸送に耐えるような品種を作る。当然、見た目はきれいだけれどまずい、というイメージだ。外国からの出稼ぎ労働者が収穫したメロンをぽんぽんと放り投げてトラックに積み込む、といった話を読んだこともある。

 そうしたものを、都市部の知識階層、ある程度の所得が確保できる階層が拒否し始めた。昨今のヒステリックなほどの健康志向とオーガニックブームは噂(うわさ)に聞いてはいたが、実際に行ってみると確かにスーパーマーケットの店頭は以前とは確実に変わっていた。

 野菜売り場が広がり、オーガニックやローフーズ(加工されていない食物)のコーナーができており、サラダバー、スープバーといった、(あちらの食生活の中では)健康的でローカロリーな総菜の売り場が活況を呈している。

 地元産有機野菜を多く取り扱う一方で、素材や基本的な調味料の売り場が狭まり、加工度を上げた食品が異常なほどに席巻している日本のスーパーとは対照的でもある。

 ただしオーガニックコーナーに置かれた、生食用イタリアン種トマトが未熟で、赤い色がついていると思えば崩れかけていたり、ローフードコーナーのシード類が、鳥の餌?と思うほどひどい味だったり、オーガニック志向もまた、ファッションと信心に見えたりする。

 そんな大都市ロサンゼルスから列車に乗って北上し、バスを乗り継いで、映画「サイドウェイズ」の舞台となったソルヴァングの町を訪れた。

 昼食を取ってバス停近くに戻ると、何もなかった公園脇の駐車場に、たくさんのトラックが止まり農産物やチーズなどを扱う市が立っている。多くの観光客が入っている町でもあり、売り手は現地産であること、オーガニックであることを強調する。

 どうせファッションと、割り切りながらも、ついつい夢中になって、イチゴ、アボカド、チーズ、その他野菜類を持ちきれないほど買い込んでいた。

 イチゴの甘さは驚くばかりだ。日本でも甘味の強い高級品種はあるが、まったく別物。口に放り込むと、はかなく柔らかく崩れ、香りがいっぱいに広がる。3パックも買い込み、洗いもせずに食べ続けた。しかしバスを乗り継ぎホテルに戻った時には、残ったパックからは赤い汁が滴り、果肉は白っぽく変わっていた。翌朝は悲惨なものだった。冷蔵庫に入れたにもかかわらず白っぽい果肉は、ところどころ黴(か)びたように黒くなり、ほとんどが溶けていた。元々が長い輸送にも保存にも耐えない物なのだ、とあらためて知った。アボカドも同様で割ってみると実が濃い黄色をしており、アボカドの香りと信じていた青臭さがなく甘い。ただしこちらも日持ちせず、しかも果肉に裸虫が丸くなって入っていたりする。

 人工的に皮を固くした果菜類、未熟なうちにつみ取る果実。さらには化学物質まみれの加工食品や総菜。それらは保存と輸送のための知恵と工夫と必要悪の積み重ねだ。必要以上の長距離輸送と、車を使っての大量買い・長期保存のライフスタイルは、環境やエネルギー問題以前に、見た目の豊かさに似合わぬ貧しい食生活を我々にもたらす。

 明日のことなど考えず、熟れた短い季節に思い切り食べ、後は皮下脂肪で堪え忍ぶ、というのは無理かもしれないが、ソルヴァング町の熟れきった果菜類はまさに至福の味でもあり、「その気になりゃ、こんなこともできるんだ」というアメリカの底力を見せつけられる食体験だった。
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by sonyasa | 2009-10-24 11:53